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鼻血を垂らす或いは額を口を切るなどすると、アルフレートは毎度真白いハンカチを手渡してくれ、拭いてはいかがかと目で促す。ちり紙などが高い時勢ではないし、勿体ない。無愛想な狩人の男は珍しく節制の意志を見せたが、この街では血を洗い落とすには困りませんぞと得意顔をされた。捨てるに違いないと踏んでいた男は多少なり安堵したが、泡となり下水の淀みに混じりゆく己の血を想像してみると、やはり少し寂しい。だから、ようやく薄く皮の張った傷に捩じ込んで、真赤にしてから返してやった。親切な男は、目を細めてほほほと笑うのみであった。
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